スーパーでは手に入りにく漢方食材ですが、普段の料理にちょっと加えるだけでイヤな症状を改善したり体の不調を整えてくれる簡単に使える漢方食材を集めました。漢方薬のように苦いとかマズイとかといった、食材自体に特に味がないので使いやすい食材ばかりです。
乾物なので常備しておき、いろいろなお料理に加えてお使いください。エキスが滲み出て簡単に薬膳効果が得られます。
五性:微温
五味:甘
帰経:脾、胃、心、肝
分類:補気薬
生薬名:大棗(たいそう)、大紅棗(ダーホンザオ)
起源:クロウメモドキ科(Rhamnanceae)、のなつめ(Zizyphus jujuba M.var.inernis Rehd.)
こんな体質におすすめ:気虚、血虚、湿痰
適応症 :補脾和胃 脾胃虚弱の倦怠無力、食欲不振、泥状便などに。六君子湯(大棗、人参、白朮、茯苓、生姜)
養営安神 営血不足による心身不安の不眠、不安感、悲しい、じっとしていられない、驚きやすいなど。
甘麦大棗湯(竜眼、当帰、酸棗仁、小麦、炙甘草)、苓桂甘棗湯
緩和薬性 薬力が強烈な薬物に配合し、性質を緩和するとともに脾胃の損傷を防止し、また味を矯正す
る。
臨床使用の要点:大棗は甘温で柔であり、補脾和胃と養営安神に働くので、脾胃虚弱の食小便溏(食が少なく下痢)や営血不足の
臓躁など心身不寧に使用する。また薬性緩和にも働き、峻烈薬と道用氏て薬力を緩和にし、脾胃損傷を防止す
る。
国立がんセンターにて、抗がん剤の副作用として現れる食欲不振や脾胃の不調を和らげるために六君子湯が処方
されることもあると聞く。
食品が持つ主な作用 :滋養強壮、胃腸の調子を整える、老化防止、精神安定、安眠など
中国や台湾などではとてもポピュラーな果物です。
昔から大棗(たいそう)という生薬として六君子湯や苓桂朮甘湯、甘麦大棗湯などの漢方薬にも使われてきました。
女性にはぜひ食べて欲しいなつめ
中国では「一日吃三棗、終生不顕老(1日3粒食べると老いない)」とか「女性の宝果」などと言われています。
なつめには鉄分と血液を作る葉酸が豊富に含まれています。葉酸は水溶性ビタミンで、赤血球を作るのに欠かせない成分です。鉄の吸収を良くする効果もあり貧血や鉄欠乏症に効果があると言われています。
初潮以来女性は毎月生理によって「血」を失い、また妊娠中の胎児や出産後の授乳でも「血」を通じて栄養を与えているので、女性は男性に比べて「血」を失いやすい生理的特徴があります。
中国の家庭では、女子が生理になるとお母さんやおばあちゃんは、なつめや金針菜など「血」を補う効果の高い食べ物で献立を作り、失った「血」をその月のうちに補う習慣があると言われています。自然と家庭で薬膳が活かされています。
日本の女性は、中国の女性に比べて貧血気味の方が多いと言われているので是非なつめを食べる習慣を作ってほしいと思います。
お腹を丈夫にするなつめ
なつめは「脾の果」とも呼ばれ、消化器系の働きを整えて、気・血を補う効果があります。
元気のない子どもを、「ひよわい子」と言いますが、「脾弱い子」と書きます。
中医学では「脾」とはお腹(胃腸など消化器系)のことを言いますが、お腹は気・血というエネルギーをつくる「気血製造機」みたいなものです。この機械の性能が悪いと、いくら新鮮なお肉や魚、オーガニックな野菜などを食べても、良い「気血」をたくさん作れなくなって、元気がなくなるのです。
暴飲暴食をしたり、逆に小食で食が細いとか、好き嫌いが多く偏食気味、冷たい物を食べたり飲んだりが多い人などは「脾」の働きが弱り「気血製造機」の性能が低下します。
なつめは、昔から弱った「脾」を整えて働きを高めてくれる食材だと知られていました。いわば「気血製造機」のメンテナンス道具のようなものです。
食欲不振、消化不良、下痢、吐き気など消化器系のイヤな症状を改善してくれると言われています。慢性的にお腹の調子が悪い人や暴飲暴食をしてしまったなというような時など、なつめを食べて「脾」(お腹)を整えて、働きを高めるようにして下さいね。
水の巡りを整える
中医学では、「脾」はからだの中の水の巡りもコントロールしていると考えています。
浮腫んだり、下痢になったり、逆に肌がカサカサになったり便秘になったりは、水の巡りが悪いからですが、それは「脾」の働きが低下しているからだと考えます。暴飲暴食や冷たい物の食べ過ぎ飲み過ぎ、偏食などにより「脾」の働きが弱って水を巡らせなくなっているのです。それでからだの中のどこかに水が溜まってしまって、逆に足りないところが出来てしまっているのです。
お腹の働きが低下して水の巡りが悪くなっているからだの状態を、中医学では「湿痰」(ほかに痰飲や水滞など)と言います。またお腹の弱さと合わせて「脾虚水滞」などとも言います。「湿痰」は水の巡りが悪くなった邪気のことですが、からだにとても悪さをします。アレルギーや原因不明の難病など、なかなか治りにくい病気などは「湿痰」が原因のことが多いです。また、中耳炎や膀胱炎など〇〇炎と呼ばれるような化膿性炎症のほとんども「湿痰」に熱がこもって「湿熱」になって起こっていますし、アレルギー性鼻炎、花粉症、喘息、リウマチ、関節炎、じんましん、腰痛や坐骨神経痛なども「湿痰」が原因です。そしてまたそんなに食べていないのに太ると言う肥満も、お腹の弱さからくる水太りタイプなのです。
そんな「湿痰」を改善するためには、水の巡りを良くする(利湿と言います)とともに、根本的には「脾」の働きを取り戻さなければいけません。中医学の治療では「健脾利湿」と言います。暴飲暴食や冷飲食をやめ、消化に良い物を食べてお腹の調子を整えることが大切です。もちろんなつめも「脾の果」と言われるようにお腹の調子を整える果物として知られています。
精神安定や不眠にも
中医学では、「血」は全身を養う働きを担っていると考えますが、もう一つ、精神活動や睡眠などにもとても関係していると考えています。「血虚」と言って「血」が不足した体質になってくると情緒不安定になり、ちょっとしたことで怒ったり、不安感が強くなったり、イライラしたりと感情の起伏が激しくなります。また自律神経にも関係し、動悸がしたり気が立って寝つけなくなります。こんな症状を改善するためにも「脾」の働きを高め、「血」を補う効果が高いなつめはとてもおすすめです。
滋養強壮、老化防止、精神安定、不眠改善などの効果があるといわれ、特になつめは、鉄や葉酸が豊富で「血」を補う効果が高い食材と言われています。
「なつめ薬膳茶」を煮出して作るのがどうしても面倒という方は、この「新疆なつめ」をさっと水洗いしてそのままお召し上がりください。
お茶請けやワインのおつまみなどそのまま手軽にお召し上がりいただけます。
100グラム当たりの栄養成分
五訂日本食品標準成分表に記載されている輸入品の乾燥させたのナツメに含まれる成分の量です。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 灰分 | 食物繊維 | ||
287kcal | 21.0g | 3.9g | 2.0g | 71.4g | 1.7g | 12.5g | ||
カロテン | ビタミンE | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | 葉酸 | パントテン酸 | ビタミンC |
7μg | 0.1mg | 0.10mg | 0.21mg | 1.6mg | 0.14mg | 140μg | 0.86mg | 1mg |
「葉酸」は赤ちゃんのビタミン
葉酸は、1941年に乳酸菌の増殖因子としてほうれん草の葉から発見された栄養素で、DNAの合成にビタミンB12とともに非常に大切な働きをします。
また、妊娠初期の胎児の脳や神経細胞を作るのにとても必要な栄養素だということが研究によりわかってきました。
胎児の先天障害のリスクを下げる役目を果たし、またDNAの合成や調整に深くかかわり、正常な細胞の増殖を助ける働きがあるので、妊娠前後の女性には特に摂って欲しい栄養素です。胎児や乳児の成長に大量に必要とされるので、妊婦さんは普段の必要量の1.7倍摂取する必要があると言われています。
このように、胎児や新生児の成長をサポートするので「赤ちゃんのビタミン」と言われています。
葉酸は、熱に弱く調理の過程で失われてしまう割合が非常に高い栄養素なので、生野菜や果物など生で食べられる食材からの摂取が効果的ですが、果物の中でも特に「なつめ」には葉酸が大量に含まれているので、是非おすすめの食材です。
なつめとなつめやし(デーツ)を良く混同される方がいらっしゃいますが、まったく別の植物です。
中医学的な違いを記載しますのでご参考にして、今の自分の身体に必要な方を選びましょう。
なつめ
学名:クロウメモドキ科ナツメ
Ziziphus jujuba
中国名:大棗、紅棗、棗子
性味:甘/温
帰経:心・脾・胃経
効能:補虚
補益気血、調営衛
(補五臓、補不足、抗過敏、抗癌)
症状:気血不足、営衛不和、栄養不良、労倦、蕁麻疹、自己免疫疾患、アレルギー性紫斑病、アレルギー性鼻炎、アレルギー性血管炎、血小板減少症、白血球減少症、表虚による自汗、各種ガン病など。
健脾益胃、補中益気(平胃気、温胃、調中和胃、潤沢肌肉)
症状:脾胃虚弱、脾胃湿寒、軟便、食欲不振、胃痛、胃潰瘍、懸飲、倦怠、体力低下、四肢無力、吐血、腸胃癖気、脱肛、血痢など。
養肝血、補肝腎、熄風
症状:貧血による眩暈、再生不良性貧血、肝炎、肝硬変、女性の臓燥、月経不順、陰虚証、盗汗、高血圧症、高コレステロール症、冠動脈失病など。
養心安神(強志、除煩悶)
症状:心血不足、動悸、不眠、精神衰弱、不安神経症など。
補肺気、生津液(潤心肺、止咳)
症状:肺虚による咳、喘息、肺癰、肺水腫、津虧証、口の乾燥など。
その他
和薬性、通九竅、渋腸止瀉
注意:湿盛、痰凝、食滞、虫積および歯病の者は慎食。
多食は風を動じ、脾はかえって病を受ける。糖尿病の者は禁食。
急性黄疸肝炎湿熱内盛の者は禁食。
なつめやし(デーツ)
学名:ヤシ科ナツメヤシ
Phoenix dactylifera
中国名:無漏子、海棗
性味:甘/温
帰経:脾・肺経
効能:補虚
補中益気
症状:脾胃気虚、気血不足、栄養不良など。
潤肺止咳、化痰平喘
症状:咳、痰、喉頭痛、気管支炎、呼吸器感染症、肺結核など。
消食
症状:食積など。
注意:糖尿病の者は禁食。
中国伝統医学による食材功能大辞典より(『中葯大辞典』、『中国葯膳学』『中国飲食保健学』『中国食療学』『中国保健葯膳大膳』『中華食物養生大全』、
『抗癌中葯大全』)
[下処理方法]
とくに下処理は必要ありません。
さっと洗ってそのままお召し上がりいただいたり、お料理のお使い下さい。
下処理は必要ありませんが、小さいお子様やご年配の方が食べる場合は、必ず種を取り出してから食べさせてあげて下さい。
※注意事項
中に両端が尖った大変鋭い種がありますので飲み込まないようにご注意ください。
特にお子さまなどが誤って飲み込まないように保護者の方は気をつけてください。
(毎年、中国では誤って飲み込んで食道や胃を傷つけ救急車で運ばれる方が数名出るそうです。くれぐれもご注意ください)
除湿清熱し中満を引き起こすので湿盛の脘腹膨満感、食積、虫積、齲歯、痰熱咳嗽などには使わない。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」どんなに良い物でも食べ過ぎは「害」になり、「脾」を傷めます。くれぐれも食べ過ぎには注意しましょう。
鋭くとがった種があります
決して飲み込まないように
ご注意ください。
特に小さいお子様が誤って飲み込まないように、気をつけて下さいね。
ナツメの食材としての効果はそのままで、新疆なつめを食べやすくカット、そして危ない種を取り除きました。
小さなお子様やご年配の方、またワンちゃんウサちゃんなどペットも安心して食べられます。
これをカリカリに煎ったり、半分ぐらいに煎ったりしても、違った食感を愉しめてとても美味しいです。
ムシャムシャと食べ出したら止まりません。
いろいろな食べ方をお試しいただき、美味しく召し上がってください。
いずれにしても、少しずつ毎日食べ続けることが大切です。
一度にドカンと食べたり、続かなかったりすると食材効果はありません。
「1日3粒を目安」に美味しく食べ続けましょう。